地を穿つ魔

少し前の話になりますが、ブライアン・ラムレイ著『地を穿つ魔』を読みました。
クトゥルー神話系の娯楽小説で、「クトゥルー眷族と戦うシャーロック・ホームズ」といった趣きでした。
(ホームズは未読なので、違うという方にはお詫びします。…w;)


さすがにドキドキもわくわくもしないお話ですが、異常な存在に説得力を持たせ、危機感を煽る演出の数々が、とても面白いと思います。
例えば、全体が架空の手紙や日記の抜粋という体裁を取っている点や、主な語りが、霊能者本人ではなく、微かな霊感しか持っていない親友の回顧録である点など。
精緻な設定の妙ではなく、いわば構造的な書き方の妙で、少ない情報から「これは何が起こっているのだろう…」と読者に想像させて楽しませることで、途方も無い話に上手く引き込んでくれます。


周辺情報から「クトゥルー神話系=恐怖小説」と理解していたのですが、これはれっきとした冒険小説だと言えそうです。
主人公は、社会的責任からではなく、個人的な探究心と危機感から苦難に立ち向かい、人類の危機を未然に防ぎ、見事これを乗り越えた暁には、更なる危険に襲われて旅立っていきます。


余談ですが、実はこの本を読んでいる間、近くの建物が取り壊しの真っ最中でした。
そのため常に部屋がカタカタ…カタカタタ…と小刻みに振動していて、地震計に噛り付くウェンディー・スミスの件を臨場感たっぷりに盛り上げてくれました。(笑


さて、何故いままで敬遠してきたクト系小説に手を出したのかというと……
投稿図書館でネギまSS『魔導探偵、麻帆良に立つ』を公開している赤枝さんが、感想掲示板で紹介なさっていたからです。
面白い話を書く人は、面白い本を読んでいるのだなと、再確認しました。